アイアムじゅんこの「そこにおすわり!」vol.6
照明師のCASAさんに座ってもらいましたー

インタビューされたヒト

アイアムじゅんこさんが会いたい人のところへ行って話を聞いてくる企画。
その名も「アイアムじゅんこのそこにおすわり!」

ライブってもんは、ミュージシャンだけでは成立しません。
彼ら彼女らを支えるスタッフさんがいて、お客さんがいて、
みんなで作るもんだと思うのです。

今回ご紹介するのは、ステージを彩る照明師さん。
なんと私が見た唯一のBAD SiX BABiESライブの照明も
担当していたとか(前回登場していただいた高木フトシさんが
ボーカルのバンド。7年も前のことです)。
お酒を飲みながらあれこれ語っていただきましたよ。

■CASAさんのプロフィール(ご本人に書いてもらいました)

1976年9月21日生まれ・大阪府枚方市出身。
昼はミナミの照明師、夜はただの呑んだくれ(アンチ一気呑み)。

中学時代にイカ天などのバンドブームの洗礼を受けて音楽・特にロックバンドに
ドップリとハマり、大阪芸術大学卒業後ライブハウス照明の道へ。
アメリカ村BIGCATを拠点に、メジャー・インディーズ問わず様々なジャンルの
アーティストやイベントの照明を手がけ、気に入られたバンドの専属照明として
ツアーに同行したりして、今年で11年目。

音楽に対してとてつもなく雑食派で、ロックと名のつくものなら大概何でも聴くが、
何故かビジュアル系のバンドマンに好かれる傾向にあり、そんな彼等から
「カリスマ照明師」と崇められ、彼等のブログで名前が出たり写真が載ったりで、
一部のお客さんの間でも有名だったりもする。

趣味はロック・特技はストロボ・燃料は麦酒と焼酎とセブンスター・嫌いはブロッコリー。
インタビュアーは

アイアムじゅんこ

ライター。2月6日に関東にて生まれる。幼少から珠算を習い、試しに受けた大学の
一芸入試にあっさり合格したため京都へ移住。そのままエセ京都人として暮らしている。
見たいライブがあれば西へ東へ飛び回る。ほとんど邦楽しか聞かないが守備範囲は広いかも。
強いてまとめると、人間くさいミュージシャンが好きです。尊敬する人は氷室京介と
山田ズーニー。ブログはほぼ毎日書いてます。
「手がかり。」(http://tgkr.seesaa.net/
はじまり!

毎日ガチンコ!プライド賭けてやってるから、
求められてることに応える努力は絶対してる。

CASA:CASAさん
じゅ:じゅんこ



じゅ:大学出てからずっと今の会社で働いてるの?

CASA:そう。

じゅ:BIG CATのオープンからずっと担当?

CASA:ううん、1年目は心ミュー(現OSAKA MUSE)とブーミン(現ESAKA MUSE)。2年目から関わりだして、3年目からいわゆる責任者になった。

じゅ:今はほとんどBIG CAT?

CASA:うん。月の3分の2くらいは入ってるね。

じゅ:照明の仕事も含めたら、年間に見てるライブの本数はすごいことになってるでしょ。

CASA:年間300ちょい?演歌からメタルまで…笑。

じゅ:すごいねー。興味あるものからないものまで臨機応変にやってしまえるのがすごい…笑。

CASAさん

CASA:まあでも演歌とメタルは一周してきて近いとこにあるからね…。マーティー・フリードマン(元メガデス。TV『ヘビメタさん』で演歌とメタルの融合を果たしていた)がそれを証明してる…笑。

じゅ:笑。私のような一般人と、照明やってる人ってライブの見方に違いはあるのかな?

CASA:ああ、俺はライブに行ったら最初の2〜3曲は絶対照明見てしまう。それにまず(照明)ブース見る。

じゅ:まずブース見るんや…笑。

CASA:このバンドは知ってる人がやってるってわかってたら普通に見るんやけど、このバンド誰がやってんのやろ?とか。

じゅ:その人によってクセとかあるんよね?

CASA:あるある。

じゅ:逆に全然知らんで見て、この照明はあの人っぽいとかってわかるの?

CASA:わかるわかる。

じゅ:すげー。

CASA:色の組み合わせとか出し方はその人次第やけど、いわゆるキメの部分はみんな同じことやるから、このへんで来るなってとこで来るのは当たり前やねんけど、あ、ここはこーへんねやとかもたまにあったりとか。

じゅ:なるほどねー。私がBIG CATに行く機会はそんなに多くないんだけど、(アーティスト側が専属のスタッフを連れてきていて)CASAさんが照明やってるときになかなかあたらないの。この前のScoobie Doもそうだったし。

CASA:あの人は○○○ホールでずっと照明してたんやけど、やっぱり○○○ホールっぽい明かりをしてるわけよ。そういうクセは出るで。

じゅ:ふーん。

じゅ:(大阪)芸大の舞台系の学科だったよね?

CASA:それはね、中学のときの友だちが昼間は照明屋、夜は定時制の高校行ってて、そいつらと夜中によく遊んでて、そいつが「卒業したらうちこーへん?音楽系の照明やってるから」って。でも、親は大学行け行けって言うから、じゃあ両立できるところないかなって探しとったら、芸大に照明コースがあったの。それでその友だちに「4年待ってくれ」って。

じゅ:そのお友だちがきっかけだったんだ。就職先を確約された大学入学ってすごいなー。

CASA:でも片道2時間かかってたから地元の連れともなかなか会わずで、通ってるうちに疎遠になってしまったんだけど…。まあ、大学の先のことを何も考えてなかったのもあるし、バンドやってたから、それでのし上がりたい気持ちもあったし。もし、それがあかんかったときの「保険」くらいの考えで。音楽に携わる仕事で手に職を持ってたほうが…っていう。

じゅ:で、大学に入ったら授業では照明のことを学び、サークルでは…軽音だよね?音楽三昧の日々だったわけですか?

CASA:いや。何も調べずに行ったその大学が、芝居系中心の学科やって、要は他にも演劇コースとかバレエコースとかあったから、その子らがやる公演を担当してた。

じゅ:今の仕事には、間接的には役に立ってるの?

CASA:立ってない(即答)…笑。まあまあ、仕込みとか体を使うことについては練習にはなってたと思うけど。それまで受けてる授業は、ほとんど先生の話を聞いてるばっかりやったし。

じゅ:そうなんや。もっと実技とかが多いのかと思ってた。

CASA:専門学校卒の子に聞いたら、ケーブルの巻き方とか一から習うらしいけど、俺らはそんなん何にも教えてくれへんかったし、そういうことは現場で覚えてこいっていうスタンスだった。芸大だから、照明を芸術的に見せるってことを教えたかったんかなあ。

じゅ:技術的なことよりも、その前の理論的なことかな。軽音のサークルのほうが今の仕事とつながってるの?

CASA:うん、そうやね。大きいと思う。俺、大学入ってすぐくらいのときに間違ってビジュアルバンドを組んじゃったときがあって…笑。

じゅ:笑。

CASA:いろんな間違いがあって…笑。化粧したりモノトーンの服着たりとか。そのときのベースが今の会社のライブハウス界隈でバイトしてて、4回生(関西では大学の学年を「回生」といいます)のときに、就職どうしようかなと思って、俺、結構順調に単位取ってたから、4回生のときは週に2日くらいしか授業行かなくてよくなってて、残りの5日間をどうしようって思ってたときに、ライブハウスで働きたいなと思って、そうや、あいつに聞いてみようと。そのとき、そいつが枚方(ひらかた)のブロウダウン(ライブハウス)で働いてたからそこに行って「仕事紹介してもらわれへんか?」って。で、そのままいきなり事務所に連れていかれて上の人と会って。そしたら「じゃあ、1年間バイトとして入って、そのまま就職する形のほうがいいんかな」って言われて。俺はそこまで考えてなかったんだけど、「そうっすねえ」とか答えて…笑。

じゅ:そういう流れ?

CASA:うん、そういう流れ。そもそもヒマつぶしのバイト程度にしか考えてなかったところでこの話。だから大学の就職課には一回も行ってない。

じゅ:即内定!

CASA:うん。いきあたりばったりっていうか…笑。

じゅ:なんて人だ…笑。でも運を味方にするのも才能よ。学生時代、音楽関係のバイトは他にしてたの?

CASA:バイトはしてたけど、音楽関係ではなく。単純にお金を稼ぐ目的で。お金ないと酒も飲まれへんし、スタジオも入れない。

じゅ:バンドは?

CASA:バンドは続いてた。就職してしまえば固定の収入は入るけど、もしバンドがうまくいくんであれば、いつでも仕事を辞める覚悟はあったんやけど…、でもその前に解散してしまった。他のメンバーも就職しちゃってね。最初は5人のバンドやったんだけど、卒業する頃には3人になってしまって。俺がボーカルギター、それとベースとドラム。やけど、他のメンバーも舞台屋になり、デザイン会社に勤めってなると、なかなか時間を合わせるのが厳しくなって…。

じゅ:そやね。

CASA:普通のサラリーマンみたいに5時であがって、夜の時間を使ってスタジオ入るとかと違って、ほんまに夜中になってしまったり。うまいこと噛み合わなくなってくるし。

じゅ:で、仕事は?

CASA:4回生のときから始めてそのまま継続。そのバンドが解散してからもすぐに新しくバンドやるつもりだったんだけど、ちょうどBIGCATの責任者に任命された時期と被って忙しくなって…って感じ。今じゃ全くギター触ってない。フライングVが1弦切れたまんまでインテリアになってる…笑。

CASAさん

じゅ:CASAさんの仕事って、本番は何をやってるかはわかるんだけど、その前後にどんなことをやってるのかが謎で…。まず設計図みたいのを書くことから始めるの?

CASA:そうそう、仕込み図。

じゅ:それは頭の中でこの明かりとこの明かりが必要、みたいにイメージして?

CASA:うん。

じゅ:それは一回一回作るの?

CASA:うん。それを元に当日その通りに色を入れて(照明の)当たりを決めた後、手作業でプログラムしていく。しかもそこにページ数があってそれを切り替えていくの。

じゅ:ページっていうのは曲数ってこと?

CASA:そうそう。そのページがなかったら卓のチャンネルの数しか照明を組まれへんの。それをページを変えることによって増やしていく。ワンマンライブだったら、1ページにつき1曲作る。それを曲数分リハーサルで作って本番でやっていく。

じゅ:すげー。限られた時間でいかにやるかってことやね。

CASA:だからリハーサルで全部プログラムしてしまわないと…って言う時間的制約もありーの。曲数が多くなると、それだけ時間もかかるわけやし。

じゅ:技は先輩のを見て覚えるの?

CASA:そう。技は自分がいいなーと思ったところは盗むね。

じゅ:マニュアルとかあるわけじゃないもんね。大学でも舞台とはいえ、照明のことを学んでたわけでしょ。それは現場では生かせた?

CASA:まあまあ根本的なとこは変わらへんから役には立ってるんやろうけど、見た目でわかるところに関しては役に立ってないんじゃないかなと思う。自覚してないだけかもしれんけど。

じゅ:照明やってるときに自分ならではの工夫ってある?

CASA:人と比べてどうかってこと?

じゅ:そう。

CASA:まあ見た目ではあんまりないんちゃうかな。仕込みを考えてる時点でオリジナルになるわけやから。例えば俺が作った仕込みで他の人がオペレーションしても、組み合わせ次第ではまったく違うものが生まれてくるし。そこはセンスの問題だから。

じゅ:ふーん。

CASA:例えば上手側(舞台右側)からの照明をメインにしたような明かりを作ったとしても、その明かりを100%出してるのか、50%出してるのかによっても見え方は変わってくるし。

じゅ:なるほどねえ。

仕込み図01

仕込み図02

じゅ:私がCASAさんと知り合ってもう2〜3年になるやん。それからライブ見るときに照明にも目がいくようになったのね。照明って工夫次第ですごい可能性が広いがる世界なんだろうなって。同じミュージシャンを違うライブハウスで見たときに、ああ、こういう照明もあるんや、とか思ったりもするし。

CASA:人が代わったら、照明も変わるしね。例えばこの曲は赤が合うって人もおれば青が似合うって人もおるわけやし。

じゅ:それって照明する人のイメージなの?

CASA:任せられるときもあるけど、ミュージシャン側からの要求もある。リハーサル始まって曲順表もらって、そこに照明とか音響さんへの要望欄があって、赤系(の光)とか青系とか、ミラーボールまわしてくださいとか書かれてる。もっと抽象的なのを言われたらまったくわからんのやけど。「アメリカの荒野を一人でドライブしてる感じ」とか。わからへん!「西海岸の…」とか。

じゅ:笑。

CASA:そのバンドは、全曲「西海岸」(のオーダー)やった。日本で活動せんと、もう西海岸行ったらええやん!…笑


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