アイアムじゅんこの「そこにおすわり!」vol.6
照明師のCASAさんに座ってもらいましたー


じゅ:ライブのときはどこを見てるの?

CASA:(照明)卓かな。ステージは半分以上見てない。そこは仕事してる部分やね。ライブを一から十まで楽しむっていうことはしてないから。逆に言うたら、一から十まで楽しませるための手助けをしてる。

じゅ:すごいね、なんかプロって感じよ。お客さんに照明のこんなとこ見てほしいとかって要望ある?

CASA:あんまりないかな。メインはバンドやから。それを楽しんでくれるんやったらそれでいいし。前半分の人はわーっ盛り上がってるから(照明まで)見てないやん。ただ、わーっ!ってなりつつも、ばっちり(演奏と)合ってるのが目に入ってくるやん。そういう瞬間をわかってもらえたらそれでいい。後ろでゆっくり見てる人たちは全体が見えてるやろうから、そういう人たちには失敗したとこは見られたくないな…笑。

じゅ:そうやね…笑。

CASA:実際、アンケートとかにも書かれてるらしいんやけどね。俺の仲いいバンドがワンマンライブやって、終わってから「さっきアンケート見てたら今日のSEのときの照明がすごいよかったですって書いてあった」って。でも本番については何も書かれてなかったの…笑。「俺ら出て来る前の話じゃん!演奏中はちゃんと合わせてくれてたんだよね!?ね!?」って言われた…笑。

じゅ:きっとその子は本番になったらバンドしか目に入らないんよ。

CASA:そうそう。

じゅ:でもそれおもろいな。

CASA:まあ、俺もお客さんのこと考えて照明してるわけじゃないから。予想しないところで盛り上がったりしたら、お客さんへの明かりを足したりはするけどね。

じゅ:照明の魅力って何やろ?仕事してておもしろいことって何?

CASA:なんやろね。まあ、前に日記(残念ながら友人のみ公開です)にも書いたけど、結局、バンドって4人とか5人おって、それぞれの音を合わせて生まれるものに、善し悪しが出るわけやん。照明に関しても結局は一緒で、その瞬間瞬間がばちっと決まるかなのね。だからそれがきれいに決まったときかな。で、それをメンバー側も「キター!」って思ってテンション上がってくれたら、これほど楽しい瞬間って無いよね。だからバンドがブレイクのタイミングがずれたら、こっちもえっ?ってなるし。

じゅ:そうだよね。こっちは合わせようと思ってやってるのに。

CASA:そう、こっちが先走ったみたいに思われるし…笑。

じゅ:そういう瞬間瞬間の楽しさが続いてる感じなのかな。毎日、本番なわけでしょ、それはすごいよね。

CASA:毎日、ガチンコ!仕込み日があって本番日があるわけじゃないから。

CASAさん

じゅ:曲はどうやって覚えるの?

CASA:えっと、知ってるバンドだったら曲も頭に入ってるから簡単だけど。まったく興味のないって言ったら失礼だけど、プライベートで聴いてるわけじゃないバンドの曲は雰囲気しか覚えないの。知らないバンドの曲を、例えばワンマンだったら20曲とかやるわけでしょ?一度や二度聴いただけではなかなか憶えられないから。こっちも普通の人間です!って言うね…笑。 事前に届く音源から小節数だけ全部メモって、あとはリハーサルのときに聞きながら明かりを作っていって、取ったデータを元にして本番をやっていく。だから、結局のところ曲は覚えてないのね。取ったデータが命。イントロが始まってから「あー、こんな曲やったなー」って思い出すことの方が多かったり…笑。

じゅ:覚えてないんや。

CASA:覚えてないっていうか、データを見て小節数は書いてるし、例えばAメロ16小節、Bメロ8小節、サビの前にブレイクあり、とかってメモしてるけども、どういうタイミングでブレイクくるかとか、例えば同じ8小節目でブレイクとか、ちょっとずれてたりとかあるやん。そういう細かいのって書いててもわからへんから、そのへんは本番のときの雰囲気見てここで!とか。早いうちから音源の資料送ってくれるバンドもあるんやけど、正直こっちも毎日そんなことやってるから、前日にならないと聞けないこともあるし。そうなるとやっつけ仕事になる場合もあるよね。

じゅ:でもそこはプロやから、やっつけとは言え、決めるところはちゃんと決めるのよね。逆に好きなバンドのときは思い入れが出る?

CASA:もう、なんかあまりにもばっちり合わせすぎてちょっと恥ずかしくもなる…笑。例えばコピーバンドのイベントとか恥ずかしいもん。

じゅ:ばっちりな照明でいくわけだ。

CASA:そうそう。本物じゃないから、そこまでやっていいのかとか…笑。

じゅ:大きい失敗とかある?

CASA:ええと、(照明)卓が壊れて電源が落ちた。真っ暗。

じゅ:それはCASAさんの失敗ではないでしょ?

CASA:うん、違うけど。

じゅ:それはどう乗り切ったの?

CASA:どうしようもないよ。卓が不調で突然バーンって電源落ちて真っ黒。頭、真っ白…。

じゅ:うまいこと言うな…笑。それって復旧したん?

CASA:とりあえずは演奏できるように作業灯をつけて。それで卓がなんとかならんかと原因を追求したんだけどどうにもならなくて。だけど照明ってある程度直接ブレーカーの上げ下げで操作できる部分もあるから、Aメロ、Bメロ、サビ…みたいな演出はできへんけど、固定の照明でやらせてもらった。

じゅ:それはシャレならんよねえ。

CASA:暗転になってしまうわけで御法度。ここで暗転してくださいっていう要望があるんなら別やけど…、

じゅ:そうじゃないもんねえ。あとになったら笑い話になるけど、その時はねえ…。

CASA:そうそう。でもそれ以外の失敗は、向こう側から言われた要望を忘れてすっぽかしてしまったとか。それくらいかな。

じゅ:そういうのってあとで言われたりするの?

CASA:言われるときもあるよ。マネジメントとか事務所のスタッフさんが本番見てるから。クレームにもなるよ。

じゅ:ライブハウスツアーとかしてたら、BIG CATだけそういうことができなかったってことになってしまうもんね。

CASA:そうそう。まあ、もっとくだけた話をすると、そこまで完璧なものを求めるんだったら、お金だして専属の照明を連れてくるわけだから。でも、マネジメントもまだ良い専属照明さんを見つけてなかったり…お金が無かったりで(苦笑)、いろんなケースで俺らみたいな「現地の照明さん」にお願いするパターンもあるわけで。お金があるから偉いバンドだとか、無いから弱小バンドだって言う見方は無いわけやん?だからこっちはこっちで求められることに応えなきゃいけないってプライド賭けてやってるから、求められてることに応える努力は絶対してるし。

じゅ:好きな照明さんはいるの?

CASA:うん、何人もいるよ。単純に見せるセンスとかそういうとこが俺の好みなのかな。でも、キャラが好きな照明さんの照明が好きなことが多いかな…笑。そのうちの一人に、どんなバンドを担当してもほとんど赤と青と白しか使わない人がいるの。まあ、それはバンドに合ってるからその人に依頼も来てるんやろうけど、基本的にもうそれしかしないっていうのを売りにしてる時点ですごい。

じゅ:それでもその人に照明を頼みたいってことよね。

CASA:前にその人がやってすごかったのが、あるバンドで、ライブ本編は薄暗い白の明かりでまったく動かさず。で、アンコール1曲だけやったんだけど、そのときだけ真っ赤にして終わったという…。

じゅ:そこまでくると伝説やね。

CASA:それが向こうの要望なんかその人のプランなのかはわからへんけどすごいなと思った。

じゅ:ちょっとミーハーな質問になりますが…、会えてうれしかった!って人いる?

CASA:それはおるけど、前にこのインタビューに出てたDJさんと一緒やで。自分の中で盛り上がるけど、そこでは出さない。仕事は仕事として。

じゅ:私がCASAさんの日記読んでて一番うらやましかったのが、布袋(のファンクラブ限定ツアー)。

CASA:やっぱり…笑。リハ終わりの汗まみれの手で握手しちゃったからね。「あっ、どもー!照明さんですか?よろしくお願いします、布袋です!」って右手出されて、メッチャ知ってるっちゅーねん!むしろファンです!って思いながらガッツリ握手!…笑。

じゅ:きゃー!!!!!

CASA:もう一生、洗わねー!

じゅ:洗うけどね…笑。

CASA:気持ちは洗わねー!…笑

じゅ:じゃあ今後、このミュージシャンの照明やりたいって人いる?

CASA:大概やってきたからなあ。

じゅ:それ、かっこいいなあ。

CASA:その場その場ではあるよ。ただ、やっぱりビックな人ほどライブハウスでやりたいってなったら専属のスタッフを連れてくるから。そうじゃなかったのが、布袋さん。

じゅ:なるほどね。

CASA:あとは清志郎さんとかかなあ。2〜3回やったことあるけど。ラフィータフィーのとき。

CASAさん

じゅ:へー。じゃあこの先の将来とか、5年後とか考えたりする?

CASA:うーん、考えてない。北京行ってたら話も変わってたんやろうけど(北京常駐っていう話があったのですよ)。

じゅ:北京も今や懐かしい話やねえ。

CASA:そうやなー。

じゅ:あんだけ悩み苦しんだのに。

CASA:いつ行くねん、いつ行くねんって。で、結局行かへんのかい!って。結局、ラクリマクリスティーのライブの照明しに行っただけやったなぁ。

じゅ:パスポート取ったのにね。でも5年後もCASAさんは今と変わらず照明をしてるような気はするけど。

CASA:うん、それは変わってないと思う。

じゅ:照明に関してもっとやりたいこととかある?

CASA:あるよ。こうしたいとかはないけど、もうテクニックの問題かな。

じゅ:うまくなりたいってこと?

CASA:そうそう。毎日毎日やってるとマンネリにもなってくるから新しい手法を取り入れていかんと。マンネリに満足してたらそれより上にはいけないし、(バンドからの)依頼も来なくなるから。

じゅ:新しいっていうのは、管理業してるとき(専属の照明さんが来てるとき)に見たりとか、他のライブハウス行ったときに見て身につけるの?

CASA:そう。テレビ見ててかっこいいなって思ったら次の日に実践してみたりとかよくしてたし。

じゅ:ほんまにガチンコ勝負だから日々勉強というか闘いというか。

CASA:逆にマンネリになったらそこで終わりなんだろうなと思う。

じゅ:しんどいと思ったことはないの?

CASA:朝早い入りが続いたり…。

じゅ:それは体力的なことやろ…笑。

CASA:まあ、やっててしんどいと思ったことはないね。転職を考えたこともない。だって今さらサラリーマンとかなられへんもん。

じゅ:いやいや、わからんやん。

CASA:いや、わかるって…笑。俺より10歳くらい年下の上司がおるわけやん。そんなやつに敬語使うとか無理!耐えられんもん。いまだに自分でネクタイもしめられへんし…笑。

(終わりです)